ヤフーが考える機械学習AIがもたらす「3つの自動化」 - (page 2)

AIとビッグデータがデジタルの世界にもたらした変化

 安宅氏は、AIとビッグデータが世の中に生み出した変化として、ネットが情報拡散の起点になりつつある点、AmazonやヤフオクなどにおけるAIを活用したレビューの精査・クリーニング、Yahoo!JAPANのインタレストマッチ広告や検索結果連動広告におけるAIの活用、マーケティングにおけるユーザーニーズの把握と訴求提案の最適化といった例を挙げた。

 「実はAIとビッグデータは新しくも何ともない。私たちの業界ではずっとやってきたことであり、AIとビッグデータは私たちのビジネスの中心にあるものだ」。

 その上で、海外で行われている最先端のAI・ビッグデータの活用事例を紹介した。安宅氏が取り上げたのは、Googleが出資したというドイツの小口消費者ローンのスタートアップであるKreditechの事例だ。

 Kreditechは、融資希望者のGPSデータによる位置情報の変化を基に行動範囲や生活リズム、定職の有無といった生活水準を推測したり、Eコマースの購買情報を基に居住の事実を見極めて不正を排除するなどして、AIとビッグデータを活用することで完全無人による融資業務を実現しているのだという。これにより、同社のAIが一定の基準を満たすと判断したユーザーであれば、誰でも時間を問わずごくわずかな時間で融資判断をしてサービスを提供することができるのだそうだ。

ドイツKreditech社によるビッグデータ活用事例
ドイツKreditech社によるビッグデータ活用事例
従来のサービスとKreditech社の比較
従来のサービスとKreditech社の比較

AIとビッグデータによって、ユーザーの行動文脈を読む

 安宅氏は最後に、AIとビッグデータの今後のチャレンジについて、さらに事例を取り上げて紹介した。1つは、ユーザーの行動文脈からユーザーの知りたいことを予測して提供するという考え方だ。例えば、Googleはユーザーの位置情報などから行動を予測し、駅に近づいた際には鉄道の運行情報をスマートフォンに提供するなどして“欲しい情報を聞かれる前に提供する”という機能を実装している。

 このようにユーザーの行動文脈をAIで理解してアクションを自動化することで、デジタルと人の関係性が大きく進歩するのだ。「その場面、その時間でこれから何が起きるのかを予測することで、データは圧倒的に小さくなり、本質的に意味のある情報となる」(安宅氏)。

安宅氏
GoogleのAI活用事例を紹介する安宅氏

 この考え方は、顧客が注文する前に購入しようとしている商品の出荷準備をする米国Amazonのパテントにおける試みや、マウスの動きなどユーザーのサイト内の行動をリアルタイムに解析して購入意欲の高いユーザーにクーポンなどを自動的に配布してコンバージョンを向上させているECサイトにも共通するものがある。

 安宅氏は「重要なのはRAWデータ(生データの集積体)ではなく、それを基にしたコンテキストリーディング(文脈の理解)をAIによってどのように行うのかということだ。AIやデータは既に無意識のうちに活用されている」と語り、今後はAIを活用していかにしてユーザーインサイトに迫れるかが重要なポイントになると提言した。

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画広告

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]