創業115年の陶磁器メーカーが「お皿」を「肥料」に生まれ変わらせる--サステナブルな仕組み

 テクノロジーを活用して、ビジネスを加速させているプロジェクトや企業の新規事業にフォーカスを当て、ビジネスに役立つ情報をお届けする音声情報番組「BTW(Business Transformation Wave)RADIO」。スペックホルダー 代表取締役社長である大野泰敬氏をパーソナリティに迎え、CNET Japan編集部の加納恵とともに、最新ビジネステクノロジーで課題解決に取り組む企業、人、サービスを紹介する。

 ここでは、音声番組でお話いただいた一部を記事としてお届けする。今回ゲストとして登場いただいたのは、ニッコー 専務取締役の三谷直輝氏。陶磁器メーカーとして100年以上の歴史を持つ同社が新規事業として生み出したのは、お皿を肥料に変えるという前人未踏の取り組みだった。

ニッコー 専務取締役の三谷直輝氏
ニッコー 専務取締役の三谷直輝氏

100年以上の歴史を誇る陶磁器メーカーが取り組んだ肥料という新規事業

加納:早速ですが、ニッコーが取り組む事業内容について教えてください。

三谷氏:1908年に石川県金沢市に陶磁器メーカーとして創業しました。当時は洋食器を作り、日本に洋食文化を広める、海外に輸出するなどの役割を担っていましたが、そこから、浴槽や浄化槽といったプロダクトにも手を伸ばし、住宅設備事業にも参入しています。現在は電子セラミック事業にも参入し、オートクチュールのシステムバスブランドなども展開しています。

大野氏:陶磁器から樹脂や住宅設備はなんとなくイメージが付きますが、オートクチュールのシステムバスや電子セラミック事業までかなり幅広いですね。新しいものを作っていくのが得意な企業という印象です。

三谷氏:陶磁器の加工技術を転用したり、新たな分野に応用したりというのが結構あったのだと思います。加えて社内にチャレンジ精神の文化もかなり根付いていますね。

大野氏:現在取り組みまれている新規事業もこのチャレンジ精神から生み出されたものなのでしょうか。

三谷氏:そうですね。ニッコーの主力製品はボーンチャイナという陶磁器なのですが、ボーンは牛の骨の灰、チャイナは磁器の意味で、ボーンチャイナには牛の骨の灰が配合されている。この製品を肥料として転用できないかと考えたのが新規事業「BONEARTH(ボナース)」のスタートです。

BONEARTHとお皿
BONEARTHとお皿
BONEARTH FARMで育てた野菜
BONEARTH FARMで育てた野菜

大野氏:ボーンチャイナの中に含まれている牛の骨を灰を肥料として使おうと考えられたのはいつごろのことなのですか。

三谷氏:4年半くらい前ですね。経営会議の最中にぽろっと「陶磁器をデザインなどの要素以外で価値が出せないか」と言ったところ、研究開発の役員が「実は、肥料にできるのではないかと昔から考えていて」という話が出てきて、ボーンチャイナに含まれる「リン酸三カルシウム」が肥料として使えるという部分に着目し、早速実験してみようという話になりました。

加納:お皿を肥料にするアイデアを、長く温めていた方がいらっしゃったこと自体がすごいですね。

三谷氏:そうですね。元々陶磁器は天然の材料でできていて、今は食器としての役割を終えると廃棄(埋め立て)されていますが、自然界に戻してあげるのが自然な流れではないかと思いました。

大野氏:実際に事業として成り立たせるためにどんな流れを踏んだのですか。

三谷氏:発想自体は面白いけれど、本当に効果があるのか、というところからはじめて、自社で実験した後、地元の石川県立大学の教授と共同研究させていただきました。そこで肥料としての効果があるというエビデンスが取れ、農林水産省と長い時間をかけて協議をし最終的には2022年2月に肥料として認定されました。

加納:これはボーンチャイナであればどんなものでも肥料として生まれ変わらせられるのですか。

三谷氏:実はそこがポイントで、現時点ではニッコーで作っているボーンチャイナのみが認められています。肥料として登録するには、原材料に何が使われているのか、安全性は担保されているのかというしっかりとしたエビデンスが必要で、それを私たちはそろえることができました。ボーンチャイナを作っているメーカーは世界中にありますが、肥料として生まれ変わらせると考えたのは現在のところ、私たちだけなのかもしれません。

今後の展開
今後の展開

 下記の内容を中心に、音声情報番組「BTW(Business Transformation Wave)RADIO」で、以下のお話の続きを配信しています。ぜひ音声にてお聞きください。

  • お皿から肥料に生まれ変わったボーンチャイナが役立つ先は
  • 食器が廃棄されることなく循環する世の中を目指す
  • ボーンチャイナでレストランと農家をつなげる未来を作る






大野泰敬氏


スペックホルダー 代表取締役社長
朝日インタラクティブ 戦略アドバイザー


事業家兼投資家。ソフトバンクで新規事業などを担当した後、CCCで新規事業に従事。2008年にソフトバンクに復帰し、当時日本初上陸のiPhoneのマーケティングを担当。独立後は、企業の事業戦略、戦術策定、M&A、資金調達などを手がけ、大手企業14社をサポート。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会ITアドバイザー、農林水産省農林水産研究所客員研究員のほか、省庁、自治体などの外部コンサルタントとしても活躍する。著書は「ひとり会社で6億稼ぐ仕事術」「予算獲得率100%の企画のプロが教える必ず通る資料作成」など。



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