スマートホームが心配や不安を拭い去る--ソニーグループの「MANOMA(マノマ)」が実現する未来

 テクノロジーを活用して、ビジネスを加速させているプロジェクトや企業の新規事業にフォーカスを当て、ビジネスに役立つ情報をお届けする音声情報番組「BTW(Business Transformation Wave)RADIO」。スペックホルダー 代表取締役社長である大野泰敬氏をパーソナリティに迎え、CNET Japan編集部の加納恵とともに、最新ビジネステクノロジーで課題解決に取り組む企業、人、サービスを紹介する。

 ここでは、音声番組でお話いただいた一部を記事としてお届けする。今回ゲストとしてご登場いただいたのは、ソニーネットワークコミュニケーションズライフスタイル 代表取締役社長の木村真也氏。スマートホーム普及の鍵を握るライトユーザーに最もリーチしやすい会社の1つとも言えるソニーグループの取り組みについて聞いた。



ソニーネットワークコミュニケーションズライフスタイル 代表取締役社長の木村真也氏

ソニーネットワークコミュニケーションズライフスタイル 代表取締役社長の木村真也氏

  1. ソニーグループで作るスマートホームサービス
  2. セキュリティ、オートメーション、ライフスタイルの3つの軸で展開
  3. 「素敵なもの」から個々のニーズへ、アプローチを変えた理由
  4. ベンチャーや海外勢も参入のスマートホーム、ソニーグループとしての強みとは

ソニーグループで作るスマートホームサービス

加納:早速ですが、ソニーネットワークコミュニケーションズライフスタイルが手掛ける事業内容について教えて下さい。

木村氏:ソニーグループ内で通信領域の事業を手掛けるソニーネットワークコミュニケーションズの100%子会社で、スマートホームサービスの事業を展開しています。もともとは、ソニーネットワークコミュニケーションズの中で、スマートホーム事業を手掛けていたのですが、意思決定の迅速化や外部企業との連携強化を目的に、2021年に独立しました。

大野氏:通信技術の中から生まれてきた事業ということですね。

木村氏:ソニーネットワークコミュニケーションズは「NURO光」や「So-net」といった通信事業を主に運営しています。その中で派生事業としてスマートホームサービスを手掛けたのがきっかけで、立ち上げたのは2016〜2017年くらいですね。

大野氏:スマートホーム事業は、何か関連商品を出す形で始められたのですか。

木村氏:最初に手掛けたのは、B2B2Cのサービスで、大手企業にスマートホームサービスをシステムプラットフォームとして提供していました。裏方的なところから始めて、時代の流れやユーザーの反応などを見ながら、プロダクトを作り、広げていった形ですね。日本は、欧米に比べてIoT機器がコンシューマーに浸透するまで時間がかかりやすい市場なので、いきなり大風呂敷を広げてB2Cで展開するのは事業的になかなか難しいと思いました。

大野氏:通信をやられていたとのことですが、現在のスマートホームブランド「MANOMA(マノマ)」にはかなりのプロダクトラインアップがありますよね。開発はどのようにやられているのですか。

木村氏:実は私たちの一番の強みだと思っているところなのですが、ソニーグループの一企業なので、ハードウェアの設計、開発、さらにはクラウドやモバイルといったアプリなどは、グループ内で一気通貫で開発し、提供しています。

 私たちがスマートホーム事業に参入した当時は、さまざまなベンチャー企業がこの領域に入ってきたタイミングでしたが、ソニーグループとして、技術、品質、ブランドにこだわって開発をしてきました。

セキュリティ、オートメーション、ライフスタイルの3つの軸で展開

大野氏:実際、MANOMAではどのようなことができるのでしょうか。

木村氏:スマートホームサービスには、バズワード的な部分があり、サービス内容が分かりづらいですよね。そこで、私たちはお客様に提供する価値として、セキュリティ、オートメーション、そして新たなライフスタイルの3つの軸でサービスを展開しています。

 セキュリティは、家族や家の状態をセンシングし、その状態がいつでも確認できます。ここまではよくあるスマートホームサービスですが、私たちは監視ではなく、気づきを与えることに重きを置いています。例えば、お子さんが塾を出たタイミングで知らせが届いたり、自宅に不審者が来たらセンサーが感知し、カメラで確認し、遠隔で声かけができるといったところが特徴になっています。

MANOMAの使用イメージ
MANOMAの使用イメージ

 オートメーションでは、エアコンを声で操作したり、「戸締まり大丈夫ですか」と問いかけたりといったことができます。最後の新たなライフスタイルは、他社にはあまりないサービスで、家事代行など、家の中に入ってきていただくいわゆる「家ナカサービス事業者」と連携しています。具体的にはスマートロックをリモートかつセキュアな状態で解錠し、自宅に誰もいない状態でお仕事をして帰っていただく。これはベビーシッターやペットシッター、将来的には介護分野などにもつなげていけると思います。

 誰もいない自宅に人が入るというのは、非常に心理的障壁が高いのですが、何かあったときのためにカメラですべてを確認できるようになっているところも特徴の1つだと考えています。

大野氏:スターターキットのようなものにカメラも標準搭載されているのですか。

木村氏:機器は何種類かあり、お客様が選べるようになっています。カメラは絶対に入れたくないという方も当然いらっしゃるので、カメラを使わずセンサーで補うなど、自由に選べるようになっています。

 ただ、何を選んでいいのかわからないという方もいらっしゃるので、いくつかパッケージをつくり、パッケージ内容にあわせて訴求するというマーケティングを実施しています。

大野氏:確かに、スマートホームはできることがありすぎて、何を買えばいいのかわからない人は多い気がします。

木村氏:そうなんです。ITに詳しい人であれば、ご自分で選べるのですが、MANOMAはもっと広い層の方にも使っていただきたい。ですからお客様の実利に刺さるような説明やマーケティングを心がけています。ここは非常に難しいところですね。

大野氏:ECや小売、B2Bと多くの販路を持つ御社だからこそ、広い層へのアピールができると思います。家電をコントロールする、スマホを使って鍵を開けるというだけではなく、リアルなサービスとの連携や、家族がどのようなライフスタイルを送っているのかが確認できることが、スマートホームのメリットだと思っています。加えて、何か異常があったときにはきちんとわかる。そういったものをトータルサービスとして提供しているイメージですね。

木村氏:まさにそのあたりがマーケティング的にチャレンジしているところで、なんでもできるというのはなかなか売りづらいというのが世の常ですよね。私たちはプロダクトに大変自信を持っていますが、お客様のニーズに応えられるような売り方をしていくのがポイントになりますね。

「素敵なもの」から個々のニーズへ、アプローチを変えた理由

加納:何を選べばいいのかわからないという方もいらっしゃると思うので、いくつかあるパッケージの中から選べるという提案をしていただけるのはうれしいですね。

大野氏:スマートフォンを使って鍵を開けたり、家電を操作したりといった便利さは、一度体験すると戻れないのですが、やはりきっかけがないと伝わりづらいですよね。今は、スマートホームサービスを導入する、きっかけづくりをしているところですか。

木村氏:おっしゃる通りです。日本の市場でスマートホームサービスで大成功を収めている企業はまだないと思っています。私たちは、このサービスを手掛けて約5年ですが、当初は「スマートホームは素敵なもの」というような売り方をしていました。ですが、この切り口では広く浅くのマーケティングになってなかなか理解されない。

 ここ1~2年は、個別のニーズに深く刺さるマーケティングに舵を切りました。お客様への説明も、製品やアプリの説明はあまりせず、離れて暮らす両親への心配や、子どもを一人で塾に行かせる不安など、個別のニーズに対して、こういった体験価値があるという説明をしっかりするようにしています。アプローチの仕方を変えることにより、以前に比べよい反応が得られているという感触はありますね。

大野氏:プロモーションの場としてはどのあたりに注目されていますか。

木村氏:大きく2つの販路を重視していまして、1つはウェブサイトでの訴求、もう1つは、お客様と接点を持たれている代理店経由です。加えて、量販店など、実際に見て体験できるようなところも最近増えてきています。

大野氏:新築マンション販売など、不動産関係の方たちと連携する動きもありますか。

木村氏:連携していきたいと思っています。顧客接点という意味では、家を買うタイミングは重要ですし、不動産会社の方からみても、スマートホームをビルトインするのは、物件の価値向上につながると考えています。

ベンチャーや海外勢も参入のスマートホーム、ソニーグループとしての強みとは

大野氏:日本におけるスマートホームは、まだ弱い部分もありますが、参入企業も増え、徐々に広がりつつあると思います。海外製のものが増えているなかで、差別化ポイントというのは。

木村氏:スマートホーム領域は、ベンチャー系の企業が非常に多く、素晴らしい製品も数多くでてきます。その中で私たちが勝負するのは、きちんとパッケージされたプロダクトであるということ。どう使うのか、サポートはどうなっているのかという部分をしっかりとフォローできるブランドであることが最大の強みだと思っています。

 設置に関しても、出張設定サービスを展開していて、スタッフがきちんと設定まで請け負う。使い方がわからない場合はコールセンターできちんとサポートをする。購入からアフターサポートまで、お客様に一気通貫で提供するのはマスに広げるという意味で非常に重要になってくると思っています。これを日本で、この規模でできている会社というのはあまりないかなと。

加納:ソニーグループでやられている強みが最大限に生かされていますね。

大野氏:日本の市場に合った展開ですね。ライトユーザーというか、スマートホームにまだ興味を持っていない人たちを掘り起こせる気がします。一方で、スマートホームはここ数年「今年こそブレイク」と言われつつ、大きな市場に至っていないという感覚があるのですが、今後の展開は。

木村氏:おっしゃるとおり、現状は、IoTに詳しい方が興味を持ち、ご自分で買ってきてセットアップして使うという世界です。しかし、今後は私たちが展開しているようなサービスを提供することで、この形態は変わってくるだろうと考えています。

 ただ、スマートホームサービス単体で販売するよりも、不動産会社や電力会社、ガス会社といった関連する事業者の方と組んでマーケティングしていくのが良いのだろうなと。加えて介護や保険といった企業と組んでのアプローチの仕方もあると考えています。B2Cを展開しつつ、異業種の方と組んで広げて行きたいですね。

加納:ソニーグループは金融事業も持っているので、グループ内のシナジー効果も期待できますね。組みたいジャンルの企業はありますか。

木村氏:ソニーグループ内には豊富なアセットがありますので、協業していくことは当然検討していきます。ただ、あまりグループ内にはこだわらず、さまざまな企業の方と組みやすい会社の建付けにしていますので、非常にオープンに構えています。

大野氏:サービス単体ではなく、複数の企業同士が連携すれば、多くの人々の生活に入り込み、使いやすいサービスを提供できる。ライトユーザーもサービスを受けやすい体制をつくりやすいのではと感じました。ここ数年毎年「今年こそ元年」と言われているスマートホームですが、木村さん的にはいかがですか。

木村氏:私たちは当事者なので、もうすでに来ているという感じはあります。一番わかりやすいのはやっぱりセキュリティですね。日本のホームセキュリティの世帯普及率は3%程度と米国に比べるととても低い。米国は10年くらい前が20%程度だったのですが、スマートホームサービスの普及により、40%まで劇的に増えました。この動きは日本にも通じると思っていて、この部分から劇的に伸びてくるのではと感じています。

大野氏:ありがとうございます。今後もスマートホーム市場の進化に注目しています。

 音声情報番組「BTW(Business Transformation Wave)RADIO」では、音声で取材内容が聞けるほか、取材後に感じた大野氏の感想なども配信しています。ぜひ音声でもお聞きください。






大野泰敬氏


スペックホルダー 代表取締役社長
朝日インタラクティブ 戦略アドバイザー


事業家兼投資家。ソフトバンクで新規事業などを担当した後、CCCで新規事業に従事。2008年にソフトバンクに復帰し、当時日本初上陸のiPhoneのマーケティングを担当。独立後は、企業の事業戦略、戦術策定、M&A、資金調達などを手がけ、大手企業14社をサポート。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会ITアドバイザー、農林水産省農林水産研究所客員研究員のほか、省庁、自治体などの外部コンサルタントとしても活躍する。著書は「ひとり会社で6億稼ぐ仕事術」「予算獲得率100%の企画のプロが教える必ず通る資料作成」など。



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